飲み込む力(嚥下力)とは?
こんにちは!まつおか歯科医院副院長の松岡夏紀です。私たちは、食べ物や飲み物を口に入れたあと、自然と「飲み込む」動作を行っています。
この「飲み込む力」を嚥下(えんげ)機能といい、舌・のど・食道・呼吸の協調動作によって成り立っています。
嚥下は一瞬の動きのように見えますが、実はとても複雑で繊細な動作です。
なぜ年齢とともに飲み込む力が衰えるの?
加齢により、嚥下に関わる筋肉や神経の働きが少しずつ低下していきます。
特に以下のような変化がみられます。
- 舌やのどの筋肉の筋力低下
- 唾液の分泌量の減少
- 感覚の鈍化(飲み物がのどに流れ込む感覚が遅れる)
- 歯の欠損や入れ歯の不適合による咀嚼力の低下
これらが重なることで、食べ物を飲み込みにくくなったり、むせやすくなったりします。
このような状態を**「嚥下障害」**と呼び、放っておくと誤嚥性肺炎などのリスクにもつながります。
嚥下力の低下によるリスク
嚥下力が低下すると、単に食事がしにくくなるだけでなく、次のような健康への影響があります。
- 食事量の減少による栄養不足・筋力低下
- 食べ物や飲み物が気管に入ってしまう誤嚥
- 誤嚥によって起こる誤嚥性肺炎
- 食事への不安からくる食欲低下や社会的孤立
口から食べることは、健康維持だけでなく「生きる喜び」にもつながります。
そのため、飲み込む力を保つことはとても大切です。
今日からできる!嚥下トレーニング
嚥下機能はトレーニングによって維持・改善が期待できます。
歯科医院でも指導を行っていますが、日常生活の中でも簡単にできる方法があります。
■ あいうえお体操
口を大きく動かして「あ・い・う・え・お」と発音します。
口や舌、のどの筋肉をまんべんなく動かすことができます。
■ 舌の運動
舌を前に突き出したり、左右に動かしたりします。
また、上あごを舐めるように動かすことで、舌の筋力を高められます。
■ 嚥下おでこ体操
飲み込むときにあごを軽く引き、手のひらでおでこを押し返すように力を入れます。
首まわりの筋肉(舌骨上筋群)を鍛えることができます。
■ 唾液腺マッサージ
耳下腺(耳の前)や顎下腺(あごの下)を優しくマッサージして、唾液の分泌を促します。
唾液は飲み込みをスムーズにし、誤嚥を防ぐ役割もあります。
定期的なチェックも大切
「最近むせやすい」「食べにくくなった」と感じたら、
歯科医院で口腔機能のチェックを受けることをおすすめします。
お口の筋肉や舌の動きを評価し、あなたに合ったトレーニング方法を提案します。
まとめ
年齢を重ねても、「自分の口でおいしく食べる」ためには、
嚥下力を保つことがとても大切です。
毎日のちょっとしたトレーニングで、飲み込む力を維持していきましょう。
記事監修:歯科医師 まつおか歯科医院副院長 松岡夏紀