日本の歯科医院でよく見かける「銀歯」。
近年は白い歯を希望する方が増えていますが、それでもなお日本は銀歯の装着率が世界的に見ても非常に高い国として知られています。
なぜ日本では銀歯が一般的になったのでしょうか?
その背景には、保険制度の構造と日本人の予防意識の低さが深く関係しています。
この記事では、
- 日本人に銀歯が多い本当の理由
- 保険制度が歯科治療に与える影響
- 歯を守るために必要な予防の考え方
について詳しく解説します。
日本人に銀歯が多い理由①:国の保険制度が「金属の詰め物」を前提にしてきた
日本の歯科保険制度では、安価で強度のある金銀パラジウム合金(いわゆる銀歯)が長らく標準治療として採用されてきました。
● 銀歯が広まった背景
- 保険適用=安くて早い治療が優先されるため
白いセラミックやジルコニアは保険が効かないため、銀歯が最も「安くて早い」治療として普及しました。 - 強度が高く扱いやすい材料だった
金属は割れにくく、以前の接着技術では修復しやすい利点がありました。 - 材料価格が安定していた
国が価格を管理しているため、治療費が一定で導入しやすかったのです。
その結果、日本では“虫歯になったら銀歯を入れるのが当たり前”という時代が長く続きました。
日本人に銀歯が多い理由②:治療中心の医療モデルで「予防」が重視されてこなかった
諸外国では「虫歯をつくらないための予防」が重視されますが、日本では虫歯になってから治療するという考え方が長く根付いていました。
● 日本の予防意識が低かった理由
- 歯科治療が保険で“安い”ため、
「痛くなったら行けばいい」という意識が生まれやすい - 定期検診を受けなくても不自由しない生活習慣
- 学校や社会での予防教育が十分でなかった
保険制度は確かに国民にとってメリットがありますが、
「治療は安いが予防は自費」という仕組みが、結果的に予防意識を下げてしまった側面があります。
日本人に銀歯が多い理由③:金属アレルギーやリスクが軽視されてきた
銀歯に使われるパラジウムなどの金属は、
- 金属アレルギーの原因
- 二次カリエスを起こしやすい(隙間ができやすい)
- 歯が黒ずむことがある
などのリスクがあることが近年明らかになっています。
しかし昔はそれらの危険性が十分に認識されておらず、
「保険で安く治せるから銀歯でいい」という選択が主流でした。
日本人と海外の大きな違い:海外は「予防」が前提の医療
多くの欧米諸国では、
- 定期検診が当たり前
- クリーニングや歯科検診に保険が適用される
- 虫歯治療は高額になる
という背景があり、予防しないと医療費が高額になる仕組みです。
つまり、海外では
“虫歯にならないこと”に価値があり、日本は“虫歯になってから治すこと”に価値がある仕組みだったのです。
これからの時代に必要なのは「治療より予防」という考え方
● 予防を習慣にするメリット
- 虫歯・歯周病になりにくい
- 将来の治療費が大幅に減る
- 銀歯や大きな治療を避けられる
- 自分の歯を長く健康に保てる
特に、
定期検診・クリーニング(PMTC)・正しいブラッシング指導は、生涯の歯の健康を守る“投資”です。
まとめ:日本人に銀歯が多いのは「保険制度」と「予防意識」が原因
● 銀歯が多い理由まとめ
- 保険制度が金属を中心とした治療を推奨してきた
- 安く治療できるため、予防より“治療”が優先されてきた
- 金属リスクが軽視されていた
- 定期検診の文化が育ちにくかった
これからは
**「痛くなる前に歯医者へ行く」→「予防で守る」**という考え方がとても重要です。
当院でも、
虫歯や歯周病を未然に防ぐ予防プログラム・定期検診をおすすめしています。
銀歯を白い歯に替えたい方、予防を始めたい方はぜひご相談ください。
記事監修:歯科医師 まつおか歯科医院副院長 松岡夏紀